電子契約 | 電子署名の概要

2020年6月20日作成



「ハンコ文化」見直しの機運が高まるなか、電子契約の普及が進んでいます。


1.電子署名とは

「オンラインで『同意する』ボタンをクリックする」等の電子プロセスによる意思表示でも契約は成立するところ、電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号 “電子署名法”)に準拠する電子契約は、より高い法的証明力を求められる文書に利用することが想定されています。電子契約クラウド業者は、これを、「認印」と「実印」の違いに例えています。[1]


電子署名法第2条第1項は、「電子署名」を以下のように定義しています。

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

電子署名法は、実装する技術に中立性を確保しながら、電子署名に「本人性」と「非改ざん性」を担保することを求めています。

また、電子署名法第3条は、以下のように規定し、一定の要件を満たす電子署名が行われた電磁的記録は、真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定されるとします。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定します。


電子署名法は、電子署名の実装技術を特定しませんが、第4条で特定認定業務を行おうとする者の認定制度を規定し、認定認証事業者は、現在、秘密鍵・公開鍵暗号に依拠するデジタル署名を採用しています。認定事業者は、あるデジタル署名とその利用者を特定する証明書等を発行します。これにより、「本人性」と「非改ざん性」が担保されます。


電子署名法は、契約当事者それぞれが電子署名を行い、電子契約を成立させることを想定しています。ただし、法令等で書面による締結を求められる契約[2]には用いることができません。


電子署名法には規定がありませんが、契約成立の時期を特定するためのタイムスタンプには、一般社団法人日本データ通信協会による認定を受けたタイムスタンプが推奨されている模様です。なお、タイムスタンプは確定日付の代替とはなりません。


電子契約により、①印紙税の削減、②契約締結プロセスのスピード化、③法令順守の強化、④災害復旧計画(Disaster Recovery Plan)、事業継続計画(Business Continuity Plan)に寄与が期待されます。他方、(a)後日付契約、(b)契約書原本破棄による意思撤回などが慣例となっていた場合、これら慣例は見直す必要があります。


現在、多数のクラウド型サービスが提供されています。[3]比較的汎用化された技術に依拠するサービスのため、低料金化・無料化が進むことが想定されます。


2.「立会人型」とは

「立会人型」と呼ばれる電子契約締結方法を採用する電子契約クラウド業者が存在します。

立会人型では、契約当事者それぞれは電子プロセスにより意思表示を行い、立会人が契約締結フローの各段階で電子署名を付与し、契約成立を裏付ける証拠とします。[4]また、契約締結フローの各段階での立会人の電子署名に代えて、履歴ログ等[5]を利用する方法も存在します。

これら「立会人型」は、時間と費用を要する、認定事業者を介した電子証明書の取得が普及していないことをから、現在、クラウド型電子契約サービスの主流となっています。


(出所:日本経済新聞(2020年5月30日朝刊)

これらの電子プロセスの履歴ログ等により「本人性」「非改ざん性」を担保する方法に、電子署名法第3条に基づく効力が働くのかは定かではありません。[6]また、そもそも電子署名の有効性を巡る判例がなく、法律上不利益に働く可能性も想定されます。これら不確実性を解消・軽減する法改正が期待されます。




[1] https://blogs.adobe.com/japan/adobesigncompliance/ ほか

[2] 任意後見契約(任意後見契約に関する法律3条)、事業用定期借地権設定契約(借地借家法23条3項)、定期借地権設定契約(借地借家法22条)、更新の無い定期建物賃貸借契約(借地借家法38条1項)、取壊し予定の建物の賃貸借契約(借地借家法39条)、農地の賃貸借契約(農地法21条)、建設工事請負契約(建設業法19条)、割賦販売法に定める指定商品ついての月賦販売契約(割賦販売法4条)、など

[3] Adobe SignCloud SignDocuSigne-sign、ほか

[4] https://www.cloudsign.jp/pdf/litigation_support_documents.pdf

[5] メールアドレス、多要素認証を含み、これらに限定しません。

[6] 法務省などは立会人型の電子契約書について、「電子署名法3条に基づく推定効(文書が有効だと推定されること)は働き得ないと認識している」との見解を12日の政府の規制改革推進会議の会合で示した。(日本経済新聞(2020年5月30日朝刊)