金融資産消滅認識 | 金融資産消滅認識の考察 財務構成要素アプローチは金融資産消滅認識を推進するのか

2017年7月1日作成



証券取引等監視委員会 | 債権流動化取引の研究① - 証券取引等監視委員会の勧告事例を題材として」では、金融資産消滅の判定について、証券取引等監視委員会の解釈に触れました。ここで改めて、金融資産の消滅の認識要件について検討したいと思います。



まず、金融資産の消滅の認識は、財務構成要素アプローチにおける取扱いとされています。

リスク経済価値アプローチ: 金融資産のリスクと経済価値のほとんどすべてが他に移転した場合に当該金融資産の消滅を認識する方法 (つまり、金融資産は分割不可と考え、殆どが移転した場合に消滅を認識する方法)

財務構成要素アプローチ: 金融資産を構成する財務的要素(財務構成要素)に対する支配が他に移転した場合に当該移転した財務構成要素の消滅を認識し、留保される財務構成要素の存続を認識する方法 (つまり、金融資産は分割可能と考え、支配が移転した財務構成要素は消滅を認識し、そうではない財務構成要素は存続する方法)


前述のブログの繰り返しになりますが、会計基準第8項は、金融資産の契約上の権利を行使したとき、権利を喪失したとき、又は権利に対する支配が他に移転したときに、当該金融資産の消滅を認識すると定めます。


また、会計基準第9項は、金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは次の三要素がすべて満たされた場合とすると定めます。

  1. 譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること
  2. 譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること
  3. 譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと

さらに、金融商品会計に関する実務指針33項(及び250項)では、譲渡人に買戻権がある場合でも、譲渡金融資産が市場でいつでも取得することができるとき、又は買戻価格が買戻時の時価であるときは、当該金融資産に対する支配が移転していると定めます。


この「譲渡金融資産が市場でいつでも取得することができるとき」とは、譲渡金融資産(つまり、財務構成要素)が譲渡可能な分離であることを所与とし、また、譲渡金融資産をいつでも買戻して元の状態を再現できることから譲渡金融資産を財務構成要素と認識したことの整合性は問題とならない場合で、これらから、財務構成要素アプローチは、理論矛盾しないような分割を前提にしていると考えられます。その考えに基づけば、リスク経済価値アプローチと財務構成要素アプローチは、認識する単位の違いで、それぞれ矛盾しないアプローチと考えられます。


以上より、譲渡金融資産が財務構成要素に分解不可で、かつ、買戻価格が固定価格の場合、譲渡金融資産の消滅の認識は行わないと考えられます。そのような場合に、消滅の認識を行うと次ぎのような状態が生じます。


消滅要件を満たさない場合、金融資産の譲渡取引は借入等のファイナンス取引に経済効果が近似します。借入を併用する投資ではレバレッジ効果が生じ、投資効率を改善させる反面、投資に損失が生じる場合には加速度的に状況を悪化させます。消滅要件を満たさない金融資産譲渡に消滅を認識すると、このレバレッジ効果が働いていることが、会計情報から読み取れなくなります。

また、金融資産の消滅の認識は、財務指標を改善させる効果があります。


以上より、債権者及び投資家への情報提供、また、保守的観点から、金融資産の消滅の認識は前提とするアプローチと理論矛盾しない範囲で行うことが望ましいと考えられます。なお、「証券取引等監視委員会 | 債権流動化取引の研究① - 証券取引等監視委員会の勧告事例を題材として」で示すとおり、証券取引等監視委員会が金融資産の消滅認識の判定に寛容な見解を示す事案が存在します。債権者及び投資家は、寛容な判断がされている可能性を考慮して、会計資料を読み解く必要があります。