診療報酬債権 | 診療報酬債権の概要 — その支払の確実性

2016年6月7日編集



診療報酬債権とは、どのような債権か?

診療報酬債権は、国民健康保険団体連合会[1]又は社会保険診療報酬支払基金[2]を債務者[3]とする売掛債権で、日本が国民皆保険制度を採用していること、日本国政府の過大な関与等を理由に、主な格付機関(株式会社日本格付研究所、株式会社格付投資情報センター等)は、その支払の確実性は日本国政府に準じると評価[4]しています。診療報酬債権には一般に減点又は返戻を原因とする債権金額の希薄化[5]が生じ、希薄化後の金額が支払われます。






診療報酬債権のうち、将来の診療行為の提供を条件に発生する未診療債権又は将来債権は、地域における新規参入の制限、地域医療継続の必要性、医療事業の公共性・公的支援を考慮すると、発生する可能性は比較的高いと想定されます。但し、診療行為が提供されない場合には、当該診療報酬債権の譲渡人である医療機関に対する仮払金と評価されると解され、その場合、当該債権の支払の確実性は当該医療機関に準じると解されます。


本稿は、診療報酬債権を基に作成しています。




[1] 「国民健康保険団体連合会は、国民健康保険法第83条の規定に基づき、保険者(市町村及び国保組合)が共同で設立した公法人で、各都道府県に一団体ずつ設立されている。設立の許可、また予算・決算等の提出が義務付けられているなど各都道府県知事が監督権限を有している。一方、国民健康保険団体連合会の加入保険者のうち3分の2以上が加入した場合、他のすべての保険者も当該区域内の会員となり、この連合会の下に診療報酬審査委員会が置かれることになっている。国民健康保険団体連合会は各保険者との契約に基づき、保険医療機関等から提出される診療報酬審査や支払を行うことができる為、現在すべての国民保険者が連合会に審査・支払の委託を行っている。」(「診療報酬債権」(2012年6月1日)株式会社日本格付研究所

[2] 「社会保険診療報酬支払基金は、1948年『社会保険診療報酬支払基金法』の制定により設立された特殊法人であり、国民健康保険を除く各保険者からの委託に基づき保険医療機関から申請のあった診療報酬の審査・支払を行っている。なお、社会保険診療報酬支払基金は、基金法の一部改正により2003年10月より民間法人化された。」(「診療報酬債権」(2012年6月1日)株式会社日本格付研究所

[3] 「1973年の最高裁判決において、①社会保険診療報酬支払基金が保険者等から診療報酬の支払委託を受けたときには、診療担当者に対して、その請求にかかる診療報酬につき、自ら審査したところに従い、自己の名において支払をする法律上の義務を負う、②国民健康保険団体連合会が保険者から審査および支払の委託を受けたときは、社会保険診療報酬支払基金と同様に診療機関に対し直接療養給付等の費用の支払義務を負う、としている。」(「診療報酬債権証券化の格付方法」(2010年2月10日)株式会社格付投資情報センター

[4] 「基金等は保険者からの診療報酬代金により医療機関に診療報酬を支払うため、基金等の支払能力は各保険者の信用力に依存しているといえる。各保険者の信用力については、政府管掌健康保険は2008年10月1日より全国健康保険協会を保険運営者とする全国健康保険協会管掌健康保険に継承されている。また、組合管掌健康保険の場合、運営者は企業の健康保険組合だが、健康保険法で健康保険組合の解散時には全国健康保険協会がその義務を承継する旨規定されている。全国健康保険協会は解散を認めない公法人として政府により設立された。その信用力としては、関連法令や設立経緯、被保険者の最後の受け皿であり日本の医療保険制度において重大な役割であること等を総合的に考えた結果、国とほぼ同等であると判断した。国民健康保険の運営者の多くは市町村(市町村国保)。また国民健康保険組合の一種である国保組合(医師国保など同業者間で設立されている健康組合)の場合も各国民健康保険組合が保険運営者となっている。しかし、そもそもの保険運営者の信用力に加え、日本が国民皆保険制度をとっていること、市町村国保の財源は被保険者から徴収する保険料を除けば、その多くを国からの資金に依存していることや国による各種救済制度が存在すること、加えて国民健康保険において、国は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるようにつとめなければならないと規定されていることを鑑みた結果、これら国民健康保険についても国とほぼ同等の信用力を有すると判断した。そのため、診療報酬債権の信用力は国相当であると考えている。」(「診療報酬債権証券化の格付方法」(2010年2月10日)株式会社格付投資情報センター

[5] 「診療報酬では、記入漏れ、記載事項誤り(保険者相違、保険証番号相違等)等の事務的内容の誤り、診療内容に誤りがある場合の返戻や、療養担当規則にもとづいて基金等が審査した結果の減額(減点)が経常的に発生する。このほか、一部のレセプトに関して請求月の翌月までに審査結果が出ない場合(支払は請求の翌々月以降となる。)、保険者の再審査請求による支払減額分と診療報酬等の相殺(保険者は、医療法人への支払が完了したレセプトについても、レセプトに疑義がある場合には後日再審査請求を行うことが可能となっており、再審査により診療報酬等の支払減額が認められた場合は、当該減額分について当月の診療報酬支払と相殺される。)による希薄化も発生する。」(「診療報酬債権」(2012年6月1日)株式会社日本格付研究所