自己信託SPCの利用方法 | 投資ヴィークルとしての自己信託SPC

2017年11月29日作成
2020年5月19日更新



特別目的会社(“SPC”)を自己信託[1]の受託者とする自己信託SPCを投資ヴィークルに用いることを検討します。


1.投資ヴィークルの要件

投資ヴィークルには、主に、SPCと匿名組合を組み合わせた仕組(“GK-TKスキーム”)が用いられています。


GK-TKスキーム等主な投資ヴィークルには、主に、①倒産隔離[2]、②税務導管性[3]の機能が期待されますが、自己信託SPCにおいてもそれら機能は確保可能と考えられます。


倒産隔離: いわゆる「償還スキーム」に設計することで、取引関係者の破綻リスクから信託財産及び信託の仕組が影響を受けないようにすることが可能と考えられます。

税務導管性: 信託は、法人課税信託[4]に該当する場合を除き、受益者課税のため、税務上の導管性の確保は可能と考えられます。更に、信託の受益者課税は、所得の性質の変更を伴わないため、不動産小口化商品等への利用が可能と考えられます。


2.自己信託SPCの制限

ただし、自己信託SPCを投資ヴィークルに用いる場合は以下の制限が生じます。


自己信託の受益権の譲渡期限:
受託者が受益権の全部を固有財産で有する(単独受益者である)状態が1年間継続したときは、信託が終了する(信託法163条2号)ため、自己信託の設定後1年以内に、少なくとも受益権の一部を他者(つまり、SPC以外の者)に譲渡する必要があります。

自己信託の受益者の数の制限:
自己信託の受益権を多数の者(50名以上)が取得することができる場合には、自己信託をしようとする者は、自己信託の登録を受けなければなりません(信託業法50条の2)。自己信託の登録を避けるため、受益者の数は、49名以下とする必要があります。

有価証券を信託財産とする場合の制限:
主として有価証券に投資する信託受益権を複数の受益者が取得することを目的とする場合、当該自己信託は投資信託に該当し、委託者は金融商品取引業者の登録を要すると解されます(投資信託及び投資法人に関する法律第2条第1項)。有価証券を信託財産とする場合で、金融商品取引業者の登録を避けるには、受益者の数を1名にする必要があります。


3.募集行為に伴う登録等

信託受益権の自己私募は、金融商品取引業に該当せず、第二種金融商品取引業の登録は不要と解されます。


  • みなし有価証券の発行者である委託者自身が信託受益権の販売、取得勧誘を行うことは、「有価証券の募集又は私募」となるが、金融商品取引業には該当せず(金商法2条8項7号)、第二種金融商品取引業の登録は不要。
  • ただし、委託者又は受益者から委託を受けた第三者が信託受益権の譲渡を媒介(信託受益権の譲渡の媒介)することは、「有価証券の募集の取扱い又は私募の取扱い」又は「有価証券の売買の媒介」となり、その第三者がこれらを業として行う場合は、金融商品取引業に該当し(金商法2条8項9号・2号)、第二種金融商品取引業の登録が必要(金商法28条2項1号・2号、29条)。

4.まとめ

これらの制限(投資ヴィークルに用いる前提より譲渡期限は問題にならないと考えられるため、特に受益者数の制限)が問題とならない案件では、自己信託SPCは投資ヴィークルの選択肢となり得ると考えられます。


信託財産 受益者数 募集方法 指図
不動産等、有価証券以外 49名以下 自己募集 受益者指図
有価証券 1名 自己募集 受益者指図

備考:

  • 法人課税信託に該当しないように設計することを条件に、受益者課税。
  • いずれの場合も、信託勘定における借入が利用可能。



[1] 自己信託とは、特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書等で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の事項を記載したものによってする方法(信託法3条3号)により行う信託をいいます。

[2] 倒産隔離 取引関係者(資産の原保有者、投資家、貸付人)の倒産から、資産流動化取引の資産や投資ヴィークル自体が影響を受けない仕組、手当。GK-TKスキームでは、主に、SPCの議決権隔離、独立第三者による管理、債権者(潜在的な債権者を含みます。)の破産申立の放棄により達成可能と考えられています。

[3] 二重課税の回避、具体的には投資ヴィークル段階での課税を回避し、投資家段階で課税されるようにすることを指します。GK-TKスキームでは、配当又は分配利益を損金に算入して投資ヴィークル段階での二重課税を回避します。

[4] 法人課税信託とは、次の(1)から(5)までに掲げる信託をいいます(法人税法第2条第29の2項)。
(1)受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託; 
(2)受益者等の存しない信託; 
(3)法人を委託者とする信託で次のいずれかの類型のもの 
①事業の重要部分の信託で委託者の株主等を受益者とするもの、
②自己信託等で存続期間が20年を超えるもの、
③自己信託等で収益分配割合が変更可能であるもの; 
(4)一定の投資信託; 
(5)特定目的信託。


関連記事

プロジェクト概要

改正信託法は、信託契約に基づく信託、自己の意思表示に基づく信託を規定します。許認可の観点からの分類と利用方法の傾向を検討します。